「デザインセンスがない」と感じている人の多くは、実はセンスの問題ではなく、判断基準を持っていないだけです。デザインの4原則(PARC)を習得すれば、デザインの良し悪しを論理的に判断し、意図的に改善できるようになります。
PARCとは以下の4原則の頭文字です:
このレッスンでは各原則の理論だけでなく、実際のデザイン事例を使って「なぜこの配置が正解なのか」を解説します。また、4原則を組み合わせたBefore/After分析と、よくある違反パターンの修正方法も紹介します。
人間の脳は、近くにある要素を「グループ」として認識します。これをゲシュタルト心理学の「近接の法則」と呼びます。デザインでは、この心理を意図的に活用することで、情報の関係性を視覚的に伝えることができます。
原則のポイント:
名刺に「名前・役職・会社名・電話番号・メールアドレス・住所」という6つの情報があるとします。
❌ 悪い例: 6つの情報をすべて同じ間隔で並べると、何がどのグループかが分からなくなります。
✅ 良い例: 「名前+役職」「会社名」「連絡先(電話+メール+住所)」の3グループに分け、グループ内は密に、グループ間には余白を設けます。
ECサイトの商品カードを考えてみましょう。商品画像・商品名・価格・レビュー星・カートボタンを1枚のカードに収める場合、近接の原則がなければ要素がバラバラに見えます。
プロのカード設計のルール:
入力フォームでラベルとインプットフィールドの距離が適切でないと、どのラベルがどのフィールドに対応するのか分からなくなります。
フォームの近接ルール:
近接の原則 Before/After
整列とは、ページ上のすべての要素が何らかの「目に見えない線」に揃っていることです。完璧に整列されたデザインは「すっきりしている」「プロっぽい」と感じさせます。逆に整列が乱れたデザインは「雑然としている」という印象を与えます。
現代のWebデザインでは、12カラムグリッドが標準的に使われています。
| グリッド幅 | 用途例 |
|---|---|
| 12カラム | メインコンテンツ全幅 |
| 8カラム | 記事本文 |
| 6カラム | 2カラムレイアウトの片側 |
| 4カラム | 3カラムカードの1枚 |
| 3カラム | サイドバー |
Figmaでは「Layout Grid」機能を使って12カラムグリッドを設定できます。「Shift + G」でグリッドを表示/非表示できます。
左揃えを使う場面:
中央揃えを使う場面:
右揃えを使う場面:
⚠️ 中央揃えのテキストは短い文章では効果的ですが、3行以上になると読みにくくなります。長い本文は必ず左揃えにしてください。
❌ よくある失敗: キャッチコピーが中央揃え、説明文も中央揃え、ボタンが左寄り、というバラバラな整列。
✅ プロの設計: ヒーロー全体は中央揃え統一 OR 左揃え統一。混在させない。ボタンはテキストに揃える。
ナビゲーションでよく見られる失敗が「ロゴと高さが揃っていないメニュー項目」です。各要素の**ベースライン(文字の底辺)または中心線(垂直方向の中点)**を揃えることが重要です。
Figmaでの整列操作:
反復とは、デザイン内で同じ色・フォント・スタイル・形を繰り返すことです。反復によって「統一感」「ブランドの一貫性」「プロフェッショナルな印象」が生まれます。
💡 反復は「コピー&ペースト」ではなく「デザインの意図的な言語」です。「このプロジェクトでは、ボタンは必ずこの色、この角丸、このフォントサイズで作る」というルールを決め、それを一貫して守ることが反復です。
大企業がブランドガイドラインを作るのは、反復の原則を組織全体で守るためです。
ブランドガイドラインで定める反復ルール:
| 要素 | 定義内容 |
|---|---|
| プライマリカラー | #6366f1(インディゴ) |
| セカンダリカラー | #10b981(エメラルド) |
| フォントファミリー | 見出し: Inter, 本文: Noto Sans JP |
| フォントサイズ階層 | H1: 48px, H2: 32px, H3: 24px, Body: 16px |
| ボタンスタイル | 高さ44px, 角丸8px, パディング16px |
| アイコンスタイル | Lucide Icons, サイズ24px, 線幅2px |
Webアプリケーション開発では、「コンポーネントライブラリ」が反復の原則を実現する中心的な仕組みです。ボタン・カード・モーダル・フォーム・ナビゲーションなどのUIパーツを一度定義し、全画面で再利用します。
コンポーネント化のメリット:
記事カードを複数並べる際、以下の要素を統一することで反復の原則が適用されます。
⚠️ 反復の罠: 反復しすぎると単調になります。単調さを避けるために、反復の中に「意図的な破り(バリエーション)」を加えることが重要です。例えば、特集記事は通常カードより大きく表示する、などです。
コントラストとは、2つの要素の「差異」を強調することです。コントラストがなければ、何が重要で何が補足なのかが分からなくなります。コントラストは**視覚的な階層(hierarchy)**を生み出す最も強力なツールです。
コントラストの原則: 弱い vs 強い
文字サイズ・太さ・色でコントラストをつけることで、視覚的な階層を作ります。
NGパターン: サイズの差が小さすぎる
| 要素 | サイズ |
|---|---|
| 見出し | 20px |
| サブ見出し | 18px |
| 本文 | 16px |
この例では見出しと本文の差が4pxしかなく、階層が不明確です。
OKパターン: 明確なサイズ差
| 要素 | サイズ | 太さ |
|---|---|---|
| H1 見出し | 48px | Bold (700) |
| H2 中見出し | 32px | SemiBold (600) |
| H3 小見出し | 20px | Medium (500) |
| 本文 | 16px | Regular (400) |
| キャプション | 13px | Regular (400) |
WCAGガイドラインでは、テキストと背景のコントラスト比に最低基準があります。
| テキスト種別 | 最低コントラスト比 | AA基準 |
|---|---|---|
| 通常テキスト(18pt未満) | 4.5:1 | AA |
| 大きなテキスト(18pt以上) | 3:1 | AA |
| UI要素・グラフィック | 3:1 | AA |
| 通常テキスト(全サイズ) | 7:1 | AAA |
よくある失敗:
コントラスト確認ツール:
要素のサイズ差を意図的につけることで、重要性の違いを視覚的に伝えます。
ヒーローセクションの例:
この4段階のサイズ差が、視線の動きを自然に誘導します。
Before(4原則違反の状態):
After(4原則適用後):
症状: ページの全テキストが中央揃えで、まとまりがない。 原因: 中央揃えが「フォーマルで美しい」という誤解。 修正: 2行以上のテキストは左揃えに変更。短いキャッチコピーのみ中央揃えを使用。
症状: すべての要素間の余白が同じで、グループが分からない。 原因: 余白=スペース、という画一的な考え方。 修正: 関連要素は近づけ(4〜8px)、無関係な要素は大きく離す(24〜48px)。
症状: ページに8種類以上のフォントサイズが混在している。 原因: 重要なものを強調しようとするたびにサイズを変える。 修正: フォントサイズは最大5段階に限定。Figmaのテキストスタイルで管理する。
症状: ページに10色以上の色が使われていて統一感がない。 原因: その場の判断で色を選び、ルールがない。 修正: カラーパレットを「プライマリ1色+セカンダリ1色+ニュートラル3色」に限定する。
FigmaのAuto Layout機能を使うと、近接(Gap)と整列(Direction・Align)を設定で管理できます。
💡 「コンポーネントで反復を管理し、スタイルで色とフォントを管理する」この2つのFigma習慣を身につけるだけで、デザインの一貫性は劇的に向上します。
4原則診断: 手元にある会社のWebサイトやアプリを開き、4原則それぞれについて「守られているか」「どこが違反しているか」を書き出してください。違反箇所には具体的な修正案も記載しましょう。
カード再デザイン: 以下の情報を含む商品カードをFigmaで作成してください: 商品画像・商品名・価格・評価(星)・カートボタン。4原則すべてを意識的に適用し、なぜその配置にしたかをコメントで残してください。
Before/After制作: 友人やクライアントのWebサイトや名刺から、デザインの4原則に違反している例を1つ選んでください。問題点を特定し、4原則を適用したAfterデザインを作成しましょう。
全問正解でこのレッスンが「完了」になり、コースの全レッスンを完了すると修了証が発行されます。解説つき・何度でも挑戦できます。
Q1.名刺の名前・役職・会社名・電話・メール・住所を、すべて同じ間隔で並べています。近接の原則に沿った改善はどれですか。
Q2.LPの4行ある説明文がすべて中央揃えで、読みにくいと指摘されました。本文に沿った修正はどれですか。
Q3.料金ページで3つのプランが同じ見た目のため、おすすめプランが目立ちません。本文のAfter事例に沿った改善はどれですか。
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